
不妊症

日本では、結婚して2年以上、夫婦生活があるにも関わらず妊娠しない場合、一般に“不妊症”といわれています。不妊症には様々な原因があります。 しかし、そのほとんどが、原因確定できない“原因不明不妊”です。
その原因を少しでも究明するために多くの検査や治療が行われますが、時間と費用を費やすだけで、結局、最終目的である妊娠にたどりつけない場合も少なくありません。
精神的サポート

日本の医療の考え方は、不妊は、思い通りに子供が作れないという症状であり、病気ではありません。できるだけ薬や注射を少なくし、なるべく心身に負担のない方法で、患者様をサポートしていきます。
不妊検査
不妊症での検査はいろいろとありますが、必ずしも全てが必要なわけではありません。また、「検査結果が正常だから妊娠できる」、「検査で異常が見つかったから妊娠できない」というわけでもありません。
不妊症は、さまざまな要因が複雑に絡み合って起こります。さらには、現代医療では知りえない原因で不妊になるケースも多いのです。
基礎体温

基礎体温を見て排卵日を正確に知ることは困難です。しかし、排卵の有無や黄体機能の把握に役立ちます。
超音波検査

超音波検査は、超音波を利用して子宮や卵巣の様子をモニターに映し出して確認する検査です。経膣超音波検査と経腹超音波検査の2種類があります。
この検査により、卵巣に関しては、卵巣嚢腫の有無や卵胞の成熟状態、子宮に関しては、子宮筋腫の有無や子宮の形態の確認、排卵前後の子宮内膜の状況などを把握します。
ホルモン検査
血中のエストロゲンや、黄体化ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、プロゲステロンなどを測定します。排卵の時期を確定するうえで重要な検査です。
精巣検査
精液検査で異常があった場合、泌尿器科にて精巣検査を行います。精巣の視診、触診、超音波検査のほか、必要であれば、造影検査や組織検査も行います。
ヒューナーテスト
検査当日や前日に性交をし、膣内の粘液や頸管粘液、子宮内液を採取します。それぞれに精子が到達しているか、きちんと運動しているかを確認します。精液検査では運動精子が多くみられても、女性の体内に入ってから動かなくなる場合があります。
子宮卵管造影検査
卵管の詰まりが無いかを確認する検査です。子宮内に造影剤を注入してレントゲン又は超音波診断で、卵管の閉塞を調べます。また、子宮も、奇形や筋腫、ポリープなどで受精卵が着床しにくいこともあります。あわせてレントゲンや超音波で検査します。
クラミジア検査
クラミジアに感染すると、子宮や卵管が炎症を起こし、卵管閉塞や周囲の癒着が生じやすくなります。陽性の場合は、症状がなくても、夫婦での同時治療が必要です。
精液検査
採精後、精液中の精子の濃度や運動率を検査します。
精液検査による判断
精液検査の所見は、下記の基準で評価されます。
※精液所見が正常でなくても、精液中、精巣上体、もしくは精巣内に正常形態の精子が見つかれば、ICSI法によって受精をさせることが可能です。
不妊症治療
不妊治療には、患者様の体調にあわせながら治療を行います。
タイミング指導
排卵時期をモニターして、性交のタイミングを合わせていきます。その後、ヒューナーテストを行い、精子が頸管を上昇しているかを確認します。また、超音波で排卵のチェックを行い、黄体機能不全がある場合には、黄体ホルモンを補充します。ヒューナーテストが良好で、タイミング良く排卵し、卵管などが問題ない場合、5~6周期中に妊娠できることがほとんどです。
人工授精(AIH)
排卵時期に、性交ではなく、マスターベーションで得た精子を洗浄濃縮し、運動良好な精子を集めて子宮膣内に挿入します。精液検査で良好精子が少ない場合や、ヒューナーテストの結果が良くない場合、性交が困難な場合に有効な治療法です。 条件が揃っていれば5~6周期中に妊娠できることが多く、それ以上続けても妊娠に至らない場合は、卵管采のキャッチアップ障害や受精障害を考え、体外受精をおすすめします。
補助生殖技術(ART)
体外の培養液中で卵子と精子を合わせて受精卵とし、分割してきた胚を体内に移植する技術を指します。卵管のピックアップ障害(キャッチ障害)、卵管閉塞や重度乏精子症、重度排卵障害、そして原因不明不妊にも有効な技術です。
IVF-ET(体外受精-胚移植)
採卵した卵子を体外受精させ、分割胚を子宮内に移植する方法です。
GIFT(配偶子卵管内移植)
採卵した卵子を精製した精子をあわせ、採卵と同日に卵管内に戻す方法です。卵管に戻すにはお腹を開ける必要があるため、数日間の入院が必要です。 卵管が通っていて癒着がないこと、精子所見が良好であることが必要です。
ZIFT(接合子卵管内移植)
受精を確認後、排卵翌日に受精卵を卵管内に移植する方法です。卵管に戻すにはお腹を開ける必要があるため、数日間の入院が必要です。 精子は顕微授精(ICSI)症例でもできますが、卵管の所見が良好であることが必要です。